現在、正社員の60%超が週1日以上リモートワークを実施しており、同じく60%超の若者が副業に関心があるといわれています*。しかしながら、自宅での仕事があたりまえにはなったものの、家賃や光熱費といった生活費の上昇により、仕事環境への投資や引っ越しがむずかしい方も少なくないはず。特に若者世代にとっては、将来のキャリアのために何か新しい活動を始めたいと思っていても、経済的な理由等からなかなか踏み出せない状況が続いてしまっています。
*参考:テレワーク実施率に異変、日本人の働き方は新たな「第3フェーズ」突入日経BP 2024.06.03(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02854/052900001/)
副業を希望する20代が約7割。「本業以外でもスキルアップの機会を得たい」の声 株式会社学情 2024.7.17(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001256.000013485.html)
野村不動産が新たに展開する新規事業「TOMORE(トモア)」は、そんな都心で暮らす若者たちの制約を解消し、可能性にあふれる新しい「ひとり暮らし」を提案するプロジェクトです。本事業を推進する住宅事業本部の3人に、新規事業にかける思いをお聞きしました。
事業化に先立つ実証プロジェクトとして、2021年11月に日本橋人形町にオープンしたコミュニティ運営付コワーキングスペース「TOMORE zero(以下、zero)」については、以前コラムでもご紹介しました。コワーキングスペース部分を再現したコンセプトスペースとして運営されているzeroでの成果を経て、この度2025年2月にオープンする第1弾物件「TOMORE 品川中延(総戸数135戸)」を皮切りに、本格的な活動がはじまります。
コリビング賃貸レジデンス「TOMORE(トモア)」は、野村不動産が新たに提案する、ひとり暮らし向けの大型賃貸レジデンスです。20〜30代の活動的な社会人をメインターゲットに、都心へのアクセスの良さと、ひとり暮らしの快適性、そしてコミュニティから生まれる安心感やワクワク感を提供する新しいスタイルの住まいとして、都心部を中心に建設を予定しています。
新たに次世代に向けた住宅の提案をスタートする背景には、近年の生活環境の変化がありました。都心に住む若者たちの悩みに寄り添う本プロジェクトの背景にある想いを、黒田さんが解説します。
「リモートワークが浸透して『いつでもどこでも働けるような時代』になり、生き方の選択肢が増えている一方で、若い世代は制約の多い生活を過ごしています。多くの方がワンルームに暮らし、オフィスと自宅を行き来する日々で、新たな人との出会いは限定されてしまっている。なにか活動を始めたいと思っていても、都心の家賃と生活費は上がり続けているため、日々の経済的な負担も大きい。TOMOREの立ち上げの背景には、これらの制約を解決し、これからの世代が自然と活躍の場を広げていけるような社会をつくっていきたいという想いがありました」
TOMOREのキーコピーは、「ひとり暮らしを、ひらく暮らしに」。キービジュアルにおいても、これまでの高級感や上質さをテーマとする野村不動産の分譲住宅シリーズ「プラウド」に比べ、上質感はそのままに明るくポップな印象に仕上がっており、新しい「ひとり暮らし」のあり方を提案したいという、本プロジェクトのメッセージが表現されています。「このキーコピーには、閉塞感のあるこれまでの日本のひとり暮らしを変えていきたい、という想いが込められています」と黒田さんは話します。
TOMOREは、ひとり暮らし向けのコンパクトな水回り付居室空間「プライベートスペース」をはじめ、共用のキッチンやルーフバルコニーでくつろぐことができる「コリビングスペース」、さらにシェアオフィスとして利用できるコミュニティ運営付きの「コワーキングスペース」の3つの空間が利用できることが特徴です。シェア型住宅とコワーキングスペースが組み合わさることで、暮らすことと働くことが有機的につながり、「ひとり暮らし」に新しい可能性が生まれることが期待できます。
シェア型住宅は共用空間を前提としているため、他の集合住宅と比べた際に、暮らしやすさや使いやすさなどの面で、不便なところが生じてしまう印象がありますが、TOMOREではコンパクトながらも野村不動産が手掛ける賃貸マンションシリーズ「プラウドフラット」と同等の水回り設備(洗面台やトイレ等)が整えられているため、ひとり暮らし向けの住宅として十分な快適さを備えています。TOMOREプロジェクトの空間デザインを手がける中北さんが解説します。
「シェア型住宅での暮らしは、なにかしら設備面で我慢しなくてはいけないイメージがあると思いますが、コンパクトな居住空間でも、しっかりと『ひとり暮らし』ができることがTOMOREの大きな強みです。収納スペースにこだわり、部屋の中にトイレ・シャワー・洗面台といった水回りを備えていますし、エントランスから共用部を通らずとも自室に帰れる導線設計とすることで、プライバシー性も守られています」
リラックスした時間を過ごすことができるリビングスペースと、仕事に集中できると同時に利用者との交流もできるコワーキングスペースといった共用空間においては、zeroのコミュニティ運営の知見が活かされています。暮らすことと働くことが交差する空間だからこそ、シチュエーションによって役割を変化させることができるデザインが必要でした。
「たとえば、普段はくつろげる場所として利用しているリビングスペースを、イベントの時には登壇者が話す壇上として利用できるなど、それぞれの空間が複数の機能を兼ね備える工夫をしています。さらに、中央にバーカウンターを設けることで、自然と人が集まり、利用者同士がゆるく接点を持つことができるように設計しています。zeroの運営で試行錯誤した点を活かすためにも、緻密に議論を積み重ねてきました」
プライベート空間とパブリック空間が重なるシェア型住宅においては、プライバシーへの配慮も欠かせません。TOMOREはセキュリティを完備し、居住空間と共用空間の導線にも気を配られていると中北さんはいいます。
「共用部のキッチンは、他の居住者の方と集まって利用したい時もあれば、一人で使いたい時ももちろんあると思うので、たとえばパジャマのままキッチンに行ってさっと部屋に戻れるような導線にも気をつけています」
これまでに野村不動産は、DINKsやファミリー層をターゲットとした分譲マンションシリーズ「プラウド」を展開してきましたが、近年は建物というかたちのあるもののデザインだけではなく、人が集まる「場」やコミュニティのデザインにも取り組んでいます。
TOMOREのプロジェクトは、zeroでの実証を経て蓄積されたコミュニティ運営のノウハウを活かすことで、「シェア型住宅+コワーキングスペース」という建物としての魅力だけではなく、入居者同士の関係性やつながりが生まれるコミュニティをデザインしていくことが特徴です。野村不動産が挑戦する新たな事業としての「TOMORE(トモア)」の可能性を黒田さんが語ります。
「野村不動産がこの事業をやる意義は明確にあると思っています。ハードとしての建物をつくり続けることはもちろん重要ですが、これからの時代、空間をつくって終わりではなく、空間に体験価値を生み出す、いわばソフトをデザインする力も磨いていかないと、企業としての競争力は維持できません。集まる方々の可能性が広がる出会いや刺激をいかに生み出すことができるかこそが、TOMORE事業における付加価値となります。」
TOMOREプロジェクトにおいて場のデザインを担うのが、「コミュニティオーガナイザー」と呼ばれる専属運営スタッフの存在です。入居を検討中の方への丁寧なオリエンテーションをはじめ、入居したばかりの方が自然とコミュニティの輪に入っていけるような働きかけをおこなうコミュニティオーガナイザーの仕事は、zeroの活動を通して試行錯誤が重ねられました。3年間の蓄積を今後TOMOREでどのように展開していくのか、黒田さんが展望を話します。
「シェア型の施設においては、利用者の方々がコミュニティのなかに居場所を見つけられることがなにより重要です。zeroでの3年間は、利用者(以下「メンバー」)の方々の交流のハブとなる運営体制と交流体験を育む運営設計を構築できたことがなによりの成果でした。ただそこに集まった人たちにコミュニティの形成を任せるのではなく、コミュニティオーガナイザーがメンバーの方々を緩やかに巻き込んでいき、コンテンツの企画や運営を通してきちんと交流体験をデザインすること。そうすることで、自然とメンバーの発言の機会が増えていくような、そんな場にできたのではないかと思います」
コミュニティオーガナイザーの存在に加え、定期的に開催されるイベントも、コミュニティ内のワクワク感の醸成に大きく寄与しています。なかでも、これまでに70回以上開催しているzeroの「メンバーズトーク」や「交流イベント」は、メンバー同士がお互いの理解を深めることができるイベントとして好評を得ています。イベントなどのコンテンツの企画を手がける金澤さんが、今後のTOMOREのイベント開催にかける思いを語ります。
「多様なバックグラウンドを持つメンバーの方々に、ご自身のお仕事や趣味について話をしていただくメンバーズトークは、ぜひ引き続きTOMOREでも開催していきたいと思っています。ビジネスでもなくプライベートでもない、なんとなく居心地のいい関係性が生まれる場をデザインしていくには、こういったイベントが大きな役割をはたします。『こんなに居心地と刺激が同居する場所はないです』と、zeroのメンバーの方々におっしゃっていただけているので、TOMOREの運営においても、お客様のニーズに合わせながら、試行錯誤を重ねていきたいと思っています」
黒田さんは「コミュニティに正解はないと思います」と語ります。変化し続けるコミュニティを運営していくには、関わる側においても常に変化が求められるのです。
「コミュニティとは、僕らが一方的につくるのではなく、利用者の方々とのコミュニケーションを積み重ねながら一緒につくり上げていくものだと思います。コミュニティの立上げフェーズと、ある程度メンバー同士の関係性が構築されたフェーズとでは、必要なアプローチが異なるので、常に議論しながらアレンジしていくことが求められました。zeroでの3年間の経験を通して、今後も活動を続けていくための土台を築くことができたのではないかと思います」
「第1弾物件となる『TOMORE品川中延』を皮切りに、これから続々と建設が予定されている本プロジェクトでは、総戸数で概ね100戸を超える大型レジデンスを、今後首都圏中心に展開してまいります」TOMOREのコンセプトである「ひとり暮らしを、ひらく暮らしに」の実現に向けて、黒田さんは強調します。
「『日本のひとり暮らしを、世界がひらく暮らしへ』とアップデートすることで新しい価値観を提示し、これからの世代の未来を応援する事業として船出していけるのではないかと考えています」
いよいよ第1弾のオープンを迎える期待感を中北さんが語ります。
「TOMOREの構想を始めてから、長い時間をかけて準備を積み上げてきましたし、その過程で利用者の方々と交流し、一緒になって活動をしながらつくってきたものを、やっと提供できるタイミングが来たことがとても嬉しく思います。これがゴールでなく、興味をもってご入居いただいた方々とまた意見交換をしながら、TOMOREがもっともっと変化していくことも楽しみです」
日本のひとり暮らしに新たな選択肢を提供したいという本プロジェクトの想いには、金澤さんも深い共感を抱いているといいます。
「私はTOMORE事業に参加する前は、職場と自宅との往復の日々で、このままでいいのかなと漠然と感じていたんです。同じような悩みを抱えている同世代は世の中にたくさんいると思いますし、TOMOREはそのような方々に住んでほしい物件だと感じています。これまでシェア型の住宅になんとなく気後れしたり、自分には合わないかもしれないと思ったりしたことがある方にこそ、ぜひ興味を持ってもらえたら嬉しいです」
なお、TOMOREのコワーキングスペースは拠点間の行き来が可能となるため、今後物件数が増えていくことで、大きなコミュニティへと発展していきます。ひとり暮らしを基点に新しいつながりを生み出す本プロジェクトが、未来を担うこれからの世代の暮らし方と働き方をアップデートする日はそう遠くないのかもしれません。最後に、黒田さんにプロジェクトの今後にかける意気込みを語っていただきました。
「TOMOREは、「住む」「働く」の快適さと、新たなヒトとの出会いをセットで届けることで、日本のひとり暮らしに新たな選択肢を届けるサービスだと思っています。答えのない時代を生きる、これからの世代が一歩踏み出していけるように、暮らしの中で自然と可能性を広げていくことができるような、そんなライフスタイルを提案していきたい。そのためにも、きちんとサービスの価値を伝えていく必要があるので、これからが勝負だと思っています」
TOMOREプロジェクトの挑戦はまだはじまったばかりです。
「TOMORE 品川中延」についてもっと知りたい方はこちら
※ 掲載の完成予想CGは、第1弾「TOMORE品川中延」に係る計画段階の図面を基に作成しており、今後変更となる場合がございます。間取りや仕様等は物件毎に異なります。
※ 掲載の参考写真は、専属運営スタッフ「コミュニティオーガナイザー」のものであり、本施設の担当は変更となる可能性があります。