LIFESTYLE主体的な選択が、健やかで豊かなシニアライフを
実現する「オウカス 世田谷仙川」
January 9, 2024

超高齢社会に突入している日本において、親や家族、自分自身の将来を考える上で、高齢になった際の生活や住まいのあり方に、誰もが向き合わなくてはならない時代になってきています。「人生100年時代」に向けて、人生を謳歌し、健やかな暮らしを送るために必要な視点とは何でしょうか?健康増進型・賃貸シニアレジデンス「オウカス」の事業推進を担当する田代雅之さんと木村仁さんに、事業を通して感じている、豊かなシニアライフを送るためのヒントを伺いました。

不動産住宅事業本部シニア事業部 副部長兼シニア事業課長
兼 野村不動産ウェルネス 事業推進部長
田代雅之 Tashiro Masayuki
2014年から「オウカス」事業の新規立上げを担当、現在同事業の開発・商品企画・営業・経営企画全般を担当。
野村不動産住宅事業本部シニア事業部
兼 野村不動産ウェルネス 事業推進部建築企画課長
木村仁 Kimura Hitoshi
「オウカス」の企画立案から設計・デザインの取りまとめ、設計・工事中の事業推進、引渡し後のメンテナンスまで通しで担当。

自然と健康寿命が延伸できるライフスタイルの提案

野村不動産グループが手がけるオウカスは、「謳歌(OUKA)する、明日(ASU)」から名付けられたシニアレジデンスであり、2017年の「オウカス 船橋」の開業を皮切りに、これまでに計6物件の施設開業が行われています。本事業立上げの背景について、田代さんが解説します。

「超高齢社会の日本において、誰もが直視したくない3つの事実が存在しています。まず1つ目が、平均寿命よりも10歳ほど早く健康寿命(介護が必要になる)が訪れる事実。2つ目は、認知症等によって一度要介護化が進むと、元の状態に戻れない事実。そして3つ目は、高齢者の健康管理はあくまで自己責任で、自立高齢者をサポートする仕組みが不足している事実です」

平均寿命よりも健康寿命が早く訪れてしまう現状から、昨今「フレイル」を予防することの重要性が指摘されています。「フレイル」とは、加齢によって体や心の働きが衰え、社会的なつながりが弱くなることで、健康障害が引き起こされやすくなる「虚弱(Frailty)」状態のこと。特にリタイアした高齢者は、現役当時よりも社会交流や運動の機会が減ってしまうため、フレイルが起こりやすい環境にさらされています。

「高齢者及びその家族が真に願うのは、『一度しかない人生、最後まで健康的で、安心して楽しく過ごしたい』ということです。その願いを実現するために、『住むだけで心身ともに自然と健康になれる仕組みを設けた住まい・サービス』を提供価値とするオウカスを開発し、皆様の世界一の人生づくりを支えていきたいという想いから、本事業をスタートしました」

この「住むだけで心身ともに自然と健康になれる仕組み」を実現するために、オウカスでは全ての拠点において「立地」、「建物」、「サービス」の3つを重視した事業を行っています。暮らしやすさを支える交通・生活利便性の高い「立地」、野村不動産の様々な住まいづくりの経験とノウハウが活かされた「建物」、身体と心の健康維持・増進に取り組む「サービス」の提供により、自然と健康寿命が延伸できるライフスタイルを提案しているのです。

緑溢れる周囲との一体感を表現した「オウカス 世田谷仙川」

世田谷キューズガーデンの中でも一際緑に包まれた「オウカス 世田谷仙川」(写真右上の建物)

2023年8月にオープンした「オウカス 世田谷仙川」では、これまでのモデルを踏襲しつつ、「立地」「建物」において更なる進化が図られています。物件が位置する「世田谷キューズガーデン(SETAGAYA Qs-GARDEN)」は、かつて第一生命の福利厚生施設として活用されてきた第一生命グラウンド(相娯園)跡地に開発された街区であり、東京ドーム2個分・約9万m2の敷地内には、同社によって守り継がれてきた壮大な緑が広がっています。都内では珍しい立地の特性が、開発にどのような影響を与えたのかを田代さんが語ります。

「オウカスは、交通網や商業店舗が充実したエリアなど、利便性の高い住環境を立地の基準としていますが、本物件は、京王線『仙川駅』・『千歳烏山』駅を生活圏とする利便性の高さに加え、壮大な緑があることが大きな特徴です。開発にあたり、新設道路を設ける必要がありましたが、今ある樹々をできる限り継承し、健やかな環境を整備できるように、第一生命・世田谷区とも道路計画について協議し、結果的に豊かな緑と開放感を存分に残すことができました。訪れた皆様は『世田谷にこんな場所が残っていたのか!』と、この立地のスケールと緑量に驚かれますね」

世田谷キューズガーデンの街区入口

「オウカス 世田谷仙川」では、立地の特徴を最大限に活かすために、豊かな自然との一体感が感じられるデザインが建物全体に取り入れられています。周囲の緑を建物の内側に取り込むようにデザインされた建物の特徴を、木村さんが解説します。

「ここを選ばれる方はきっと、世田谷らしい自然と共生した健やかな環境に共感される方が多いのではないかと考えました。そのため、木造棟の真ん中にある大木をはじめ、できるだけ既存樹を残した建物の配置を計画し、芝生広場や森の緑を建物で断ち切らずに、連続させる設計を心がけました。ラウンジとエントランスホールをガラス張りにすることで、エントランスから中庭まで視線が抜け、周辺の緑と中庭の緑のつながりが感じられるようにしています」

日常的な運動習慣や入居者同士のコミュニケーションの場となるフィットネスとカフェは、他のすべての拠点でも設けている共用施設ですが、本物件ではさらに外部の人との交流が活発に行われやすいように、Qs-GARDENの芝生広場に向かって開かれています。

「建物の周りには散策を楽しめるランニングロードや芝生広場があり、時には野球観戦をしたり、イベントに参加したりと、様々な楽しみ方ができるのも、他の拠点とは大きく異なる点です。3棟の住居棟に囲まれた中庭(シーズンズガーデン)は、ご入居者に散策や寛ぎを楽しんでいただけるよう設計しています。ベンチやパーゴラ、仙川の湧き水をイメージした水景も、安らぎが感じられるスポットです」

世田谷キューズガーデン内の芝生広場

世田谷キューズガーデンには、ウォーキングやジョギングに最適なゆとりある歩道スペース、テニスコートや野球場に加え、野菜が育てられるシェア菜園もあり、豊富なアクティビティに取り組める環境が広がっています。入居者自身が活動的な毎日の過ごし方を選択できることが、心身の健康の維持とフレイルの予防に役立っているのです。

「訪れやすさ」を設計し、フレイルを予防するつながりをつくる

建物と周囲の緑との一体感は、居住者だけではなく、訪れる方の気持ちにも変化を生みます。「オウカス 世田谷仙川」の敷地は第1種低層住居専用地域にあたるため、建物の高さを12m以下※にする必要がありましたが、階高に制限が生じる一方で、周辺の樹木よりも建物が低くなるため、周辺環境に溶け込み、外部からの「訪れやすさ」につながっています。低層建築の設計にかける想いを木村さんが話します。

※通常、第1種低層住居専用地域の高さの限度は10メートルと定められていますが、建築基準法第55条第2項では、政令および特定行政庁が認める場合においてのみ、高さの限度が12mまでと定められています。

「建築設計を進める中で、第一生命から街区内に散策路をつくる提案があり、そこから見えてくる建物のイメージを強く意識しました。周囲に高さ20mを超える樹木が生い茂る中に、12mの低層の建物が建っている、そんな『木立の中の低層建築』を実現したかったんです。さらに、木造棟の前面の木製デッキを広く張り出すことで、訪れる人を迎え入れるオープンな表情も演出しています。内側から周囲の緑を十分に享受できる空間であることはもちろん、外から見た時に、中に入ってみたいと思える空間であることが大事でした」

世田谷キューズガーデンの街区内には、子育て世代の多い分譲マンションや学生寮、公園、運動場、テニスコートなど、多彩な世代が集まる環境となっています。一般的な高齢者住宅は、主に入居者のご家族だけが訪れる「クローズ」なものが多いですが、本物件では、地域住民にも「オープン」な建物が特徴としてあります。フレイルの予防には社会的なつながりが不可欠のため、入居者だけでなく、近隣の住民も含めた多様な世代とのコミュニケーションが生まれやすい環境は、健康寿命の延伸につながる大きな可能性を秘めています。

暮らし方を自ら選択することが、豊かなシニアライフにつながる

現在、オウカスのWebサイトでは、入居者とご家族の声の紹介動画が公開されています。撮影の際に田代さんは、あらためて自立型シニアレジデンスの新たなモデルとしての可能性を感じることができたそうです。

「事業構想から約9年経過し、改めてご評価のインタビューをさせて頂いた際には、ぐっとくるものがありました。現在、介護型の高齢者住宅への入居理由の多くは、要介護となり仕方なく入らざるを得なくなった場合がほとんどですが、オウカスは、健康であり続けながら、人生を謳歌して頂くことをサポートする住宅です。インタビューを通して、ご入居者はもちろん、親にはずっと健康でいてほしいという、子どもたちの思いにも応えられていると実感しており、またこのようなシニアレジデンスはまだ世の中に少ないため、より多くの方にオウカスを届けていきたいです。」

映像の中には、「自分次第でどのようにも楽しめる」という入居者の言葉があります。木村さんも入居者の方々の姿を通して感じているのは、そういった主体的な楽しみを見つけ出すことの豊かさだといいます。

「塗り絵、フラワーアレンジメント、園芸など、入居者の方々がそれぞれ得意なことを教え合う活動が生まれているのを見ると、自分たちで楽しみ方を考えられる暮らしの豊かさを感じます。建物づくりにおいても、そういった入居者自身による暮らし方の工夫が生まれやすい仕組みが必要です。すべてが与えられた、ただそこで生活すればいいだけの建物ではなく、入居者が自分で暮らし方を決めていく余地を残した建物が、人生100年時代の豊かな暮らしを支えのではないかと思います」

また、2021年より野村不動産と千葉大学予防医学センター社会予防医学研究部門が実施した共同研究では、一般的な高齢者との比較した際に、オウカスの入居者はスポーツ・趣味・学習教養のグループ活動に週1回以上参加する割合が高いことが示されました。さらに、入居することで自然と社会参加が促され、要介護リスクの低減につながる可能性があることを数値で評価することにも成功しています。「私たちが目指してきたものが、定量的にも実証されつつあります」と、成果への実感を田代さんは語ります。

最後に、豊かなシニアライフを送る選択肢として、オウカスが提示できる価値について田代さんにお話いただきました。

「将来への不安を抱えているものの、『自分たちにはまだ早い』と決断を先延ばしにしている方が数多くいらっしゃると思います。しかしながら、実際に介護が必要になると、選択肢も限られ、ご本人・家族にとっても、判断がつらい状況になってしまいます。豊かなシニアライフを送るためには、元気なうちの前向きな選択として、そのような環境に早めに身を置くことが重要と考えています。私たちは、オウカスを通して、人生を謳歌して頂くためのサポートを行うとともに、子どもたちにもここなら安心と思って頂ける選択肢の一つとして、常に進化・成長しながら、価値を届けていきたいと思っています」

両親だけではなく、いつかは自分自身にも訪れるシニアライフ。「仕方なさ」を理由に施設を選ぶのではなく、自ら主体的に暮らしを選び取ることが、人生を謳歌できるシニアライフの豊かさにつながるのかもしれません。

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