「BLUE FRONT SHIBAURA(以下、ブルーフロント芝浦)」は、約10年間にわたって、延床面積約 55 万m²の敷地にオフィス・ホテル・商業施設・住宅が段階的に完成する大規模複合開発。浜松町ビルディング(東芝ビルディング:東京都港区芝浦 1-1-1)の建替事業として、2021年よりツインタワーの建設が始まっており、2025年にS棟、2030年度にN棟が竣工する予定になっています。野村不動産の創業以来、最大規模の開発について、開発に携わり3年目となる2024年春、運営準備に奮闘している青山光一さんをインタビュー。本プロジェクトが実現するものは何か、目指すものは何か。概要から詳細、開発プロセスのエピソードまで、幅広くお話を伺いました。
「ブルーフロント芝浦」は、野村不動産と東日本旅客鉄道株式会社が共同で推進している、国家戦略特別区域計画の特定事業です。区域面積約4.7ha、高さ約230m、延床面積約55 万m²に及ぶ街区に、S棟とN棟からなるツインタワーを建設し、東京湾岸部の新たなシンボルとして、東京の景色を一新します。
「本プロジェクトの最大の特徴は、交通アクセスのよい都心でありながら、空と海が広がる圧倒的な眺望です。商談の際には、必ずサロンからの眺望を観ていただくのですが、ブラインドを開けた瞬間に、みなさん、歓声を上げられて笑顔になるんですよね。この恵まれたロケーションを活かして新たなビジネスと観光の拠点をつくることで、この地に貢献していきたいと思っています」
設計者は、世界的建築家である槇文彦氏。グローバルに活躍する日本人建築家にお願いしたいという意向から、槇氏への設計依頼とつながりました。
「槇さんは、国内外で多数の権威ある賞を受賞してきた日本を代表する建築家です。2001年のアメリカ同時多発テロ事件で崩壊したワールド・トレード・センターの再建にも携わられており、4 ワールド・トレード・センターを設計されています。これは72階建、高さ約298mの巨大な建築ですが、周囲の景観を写り込ませるようにデザインしているため圧迫感がなく美しいんですね。この考え方は本プロジェクトのイメージに近しいと感じました」
槇氏は「一度この場所にきたら一生忘れることのできない、新しい祝祭性の実現を目指すことを約束したい」と述べられており、期待が高まります。
「ブルーフロント芝浦」を語るうえで大切なトピックが、時代に寄り添う新たな働き方「TOKYO WORKation(トウキョウ ワーケーション)」の提案だとのこと。青山さんがお話してくれます。
「東京の利便性を享受しながらも、空と海に開かれた街だから叶うワークスタイルを『TOKYO WORKation』と定義しました。『WORK+vacation』という働き方が、ビジネスパーソンに支持されるようになった背景を踏まえて、共用部の設計には特に注力していますね」
オフィスワーカー専用の28階スカイラウンジでは、屋外テラス、カフェ、フィットネスから瞑想スペースがあり、サウナまでが利用できるそう。それぞれが自分に合ったワークスタイルを実現できる環境が整います。
「コロナ禍を経て、自宅で働くということが当たり前になったいま、『通勤時間をかけてでも出社したい』と思えるような圧倒的な吸引力がオフィスには必要なのではないでしょうか。オフィスに来たほうが気持ちがいい、仕事がはかどる。そんなふうに感じてもらえたら」
さらには、周辺部を含めたエリア全体も1つのワークプレイスに。オフィスフロアだけではなく、タワーの足元に広がる緑や運河沿い、ホテルやレストランからも、好みにあったワークプレイスを選べる環境が誕生します。
また、千葉大学との共同研究により、海の景観は快適感とリラックス感を高めること、気分の改善効果をもたらすことが科学的に解明されたそう。
「さらに外向的で激しい、いわゆるリーダータイプの人においては、顕著な生理的リラックス効果がもたらされることが明らかになりました。本物件は羽田空港・成田空港へのダイレクトアクセスが可能なことや、JR浜松町駅、東京モノレール浜松町駅、都営地下鉄大門駅、ゆりかもめ日の出駅と4駅6路線が利用できることもあり、日本をリードする大企業さまや外資系の企業さまから評価をいただいております」
S棟の上層階には、世界最大手のホテルグループであるアコーのラグジュアリーホテルブランド「フェアモント」が日本に初めてオープンします。ホテル名称は「フェアモント東京」、開業は 2025 年度を予定しています。
「いままでにもさまざまな場所を検討されていたそうなのですが、本ロケーションを視察にいらしたマネージャーが、この眺望を見たときに『Only One View!』と感銘を受けられたことから、開業が決まりました。客室、レストランとバー、スパ、フィットネスセンター、プール、バンケット、カンファレンス、チャペルを備えるフルサービスのホテルとなります。国内外からのゲストや婚礼をされるカップルなども増えて、さらなる賑わいが創出できると思います」
低層階に入るのは、飲食店を中心にした商業施設。敷地内の豊かな緑を引き込み、運河に向けて開いた設計で、心地よくお食事を楽しむことができるそう。
「オフィスワーカーや地域のみなさんに利用していただくのはもちろん、浜松町駅はモノレールの始発・終着であることから、観光客が利用する機会も多くポテンシャルの高い立地です。駅からの歩道や、水上テラスの整備もしますし、浜松町・竹芝・芝浦の3地区の回遊性を高めることを目指して計画を進めています。
オフィスワーカー、住民、観光客が混じり合い、賑わっていく。人の流れは大きく変わるのではないでしょうか」
「ブルーフロント芝浦で」は、2021年に「芝浦一丁目地区まちづくり協議会」、2022年に「一般社団法人芝浦エリアマネジメント」を設立し、2つの団体が連携することにより、エリアマネジメント活動を推進しています。
「10年にも及ぶ開発においてもっとも大切なことは、地域と連携しながら街づくりを進めることです。特に芝浦エリアは、オフィスや住宅、そのほか商業施設やホテル、公共施設、倉庫などさまざまなものがあり、多様な方々がいらっしゃるため、より丁寧にネットワークを築きたいんですね」
清掃活動や防災活動を重ねるごとに、だんだんと顔見知りも増えているとのこと。リアル宝探し街歩き、ナイトクルーズ、ライトアップや各種お祭りなど、さまざまなイベントを通して地域のみなさまとの時間を重ねています。
取材の直前も、レストランを備えた小型船ターミナル「Hi-NODE」でのイベントについて、ミーティングをしていた青山さん。子どもたちが主体となってメニューや告知方法を考えているそうで、イルミネーションで飾ろうというアイデアも子どもたちから出てきたもの。港区は教育への関心が高いこともあり、子どもを中心としたプロジェクトには、地域のみなさんが笑顔で協力してくれると言います。
物件が竣工・開業して終わりではない。持続的に街と関わり、そのプロジェクトが地域に喜んでもらえてこそ意味があると青山さんは強調しました。
地域を担う子どもたちに地域について主体的に学ぶ機会を提供する港区の地域事業「SKDs ※1学びのまちプロジェクト」に協力し、小学校での出張授業「まちをみるめ」も実施中。青山さんも講師として教室に出向いています。
「『まちをみるめ』は、他者の視点で街を観察し、街への興味や関心を育む教育プログラムで、これまでにもさまざまな小学校で出張授業を行ってきました。本エリアでは2018年から芝浦小学校に行き始めて、2023年から芝浜小学校にも行っています。座学や学校内でのフィールドワーク、グループディスカションなど、パッケージはあるんですが、いつもまったく同じ授業にはならないんですよ。生徒の反応によって内容が変わるのが面白いですし、毎回新しい発見がありますね」
※1. S(芝浦)、K(海岸 2・3丁目・港南)、D(台場)、s(サスティナブル)の頭文字。
「親子で街のステキなところをあげてもらう宿題では、こどもも大人もみんな運河という回答に。一方で改善したいところも運河。この授業を通して地域の方から、街のリアルを教えていただき、街づくりに生かすための重要なヒントを得ています。また、行政との協議においても実際に住んでいる方の声は貴重な根拠となりますね。」
青山さんのお話の中で印象的だったのは、実際に住んでいる人の感性を何よりも信用しているという言葉。ブルーフロント芝浦は、人と社会の新しい未来をつくりだすことを目指していますが、では人と社会の新しい未来とは何なのか。その答えは地域の人の声にあると言います。
無理に何かを導入しても根付かない。結局は、地域の方の感性に合うものが、街に育てられていく。大規模開発ながら、人に寄り添い、一人ひとりが心地よく過ごせる街づくりを進めている姿勢が伝わってきました。
まだ見ぬ、Life & Time Developer へ。
野村不動産の新しいチャレンジが始まっています。