転勤や異動などで長期間、持ち家を離れる場合「売却する」もしくは「賃貸に出す」という選択肢があります。
今回は、もしも持ち家を「賃貸に出す」場合、大事な資産である持ち家を守るための注意点と、手間をかけずに賃貸に出すためのコツを紹介します。
転勤などで長期間持ち家を離れる場合、「売却する」か「賃貸に出す」か判断するためのポイントを3つ解説します。
・短期間:5年以内程度
賃貸に出しても数年後には再度持ち家に住めるため、賃貸を検討してもいいでしょう。
・長期間:5年以上程度
売却することも選択肢となります。なぜなら賃貸中も持ち家の価値は下がっていくからです。これらを踏まえると資産価値の高いうちに売却することも一つの方法といえます。
・築年が5~15年程度:賃貸に出すことも選択肢の1つ
築年数が浅い5~15年程度であれば、築古の物件に比べると修繕費などは比較的安く抑えられ管理の手間もかかりにくいため、賃貸に出すことを考えてもよいでしょう。
・築年が20年以上程度:売却するのも選択肢の1つ、賃貸に出す場合は要注意
築年数が20年・30年といった築古物件の場合、賃貸に出すと各住宅設備の故障や水回りの修理など不具合や修繕などの発生が多く維持管理の手間も大変なため、売却を検討する方もいます。また、賃貸に出すと築年数がさらに延びてしまい売却しにくくなる恐れもあるでしょう。そのため築古物件を賃貸に出す際は注意が必要です。
持ち家を賃貸に出す場合、毎月の家賃収入と住宅ローンの残債とのバランスが重要です。毎月かかる住宅ローン返済額よりも家賃収入が低い場合は、赤字となり自己資金から補てんが必要になります。
また、赤字の場合は転居先の家賃と住宅ローンの返済が重なることで経済的な負担が大きくなるでしょう。ただし、転居先の住宅で家賃補助が出る場合は、ローン返済との二重払いにはならない可能性もあります。家賃補助の条件面などを事前に勤務先に確認してみましょう。
持ち家を賃貸に出す場合は、メリットだけでなくデメリットもあります。以降では、賃貸に出すメリット・デメリットを確認していきましょう。
持ち家を賃貸に出すことの主なメリットは、以下の3つです。
持ち家を離れる期間中でも、第三者へ賃貸に出すことで家賃収入が得られます。その分を住宅ローンの返済に充てることで、支出の一部を補てんできるでしょう。賃貸に出す際に必要な賃貸借契約などの書類は不動産会社が用意してくれるため、初めての方でも安心です。
また、売却してしまうと持ち家は手元に残りませんが、ある期間だけ賃貸に出すのであれば「資産」として手元に残ります。賃貸期間が終了した後は、そのまま住み慣れた街に居続けることが可能です。もし将来的に資金が必要になった際、資産として残しておけば売却して資金に換えることもできるでしょう。
さらに持ち家を賃貸に出すことで、その物件の管理を管理会社や入居者(賃借人)に任せることが可能です。住宅は、換気や通水、掃除などのメンテナンスを行わないと傷んでいきます。しかし入居者がいる限り、空き家になっている状態に比べて老朽化も緩やかになります。加えて、管理会社による丁寧なメンテナンスも行われるため、持ち家が傷んでしまうといった心配も軽減されるでしょう。
持ち家を賃貸に出すことの主なデメリットは、以下の3つです。
定期借家契約の更新はありませんが、転居先から思ったより早く帰任した場合、基本的に入居者を退去させることはできません。そのため賃貸借契約が終了するまで仮住まいが必要になります。
また、家賃収入から経費や控除を差し引いた不動産所得が年間20万円超の場合は確定申告が必要です。自分で確定申告を行う場合は、書面作成や収支管理の手間がかかります。ただし税理士などの専門家に相談・依頼すれば、コストは発生しますが手間はかかりません。
持ち家を賃貸に出す際は、住宅ローンから同一の金融機関が扱っている不動産投資ローンに変更を求められる場合もあります。これによってローン金利が上昇し、返済額が増えることがあることも念頭に置いておきましょう。
ここでは、持ち家を貸す際にやるべきことを4つ紹介します。
賃貸借契約は「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類です。帰任後に入居者がいて持ち家に戻れないリスクを回避した方は、契約期間満了時に確実に退去してもらえる「定期借家契約」を選択するといいでしょう。
ただし、定期借家契約は契約期間に制限があり更新もないため、普通借家契約と比べて借主が見つかりにくい傾向があり、結果家賃も低下する可能性があります。
定期借家契約は、普通借家契約に比べると手続きが煩雑になるため、持ち家を賃貸に出した経験が豊富な不動産管理会社に任せることをおすすめします。
具体的には、賃貸借契約書とは別に「契約更新がなく契約満了によって契約が終了する」旨の内容を記載した書面の作成と事前説明を賃借人に対し行わなければなりません。また、契約終了時にも賃借人への通知義務(契約終了の6ヵ月~1年前までに賃貸借契約が終了する旨の通知をする。通知を怠ると予定通り契約を終了することができなくなる。)を守る必要があります。
持ち家の貸し出しをより慎重に進めたい場合は、税理士や弁護士と連携できるなど賃貸管理について総合的なサポート体制のある不動産会社を検討すると良いでしょう。
住宅ローンが残っている状態で持ち家を賃貸に出すと契約違反になる可能性があります。そのため銀行に対して一時的な賃貸としての利用を報告しておくことが重要です。前述通り、不動産投資ローン等への変更も必要な場合があります。
報告を怠ると住宅ローンが不正利用されていると見なされ、残高の一括返済を求められる可能性がありますので注意しましょう。
賃貸契約終了時は、原状回復に関するトラブルが発生する可能性があります。入居前に現況確認書(入居時チェックリスト)を作成・配布して、入居時の物件状況を記録しておきましょう。契約終了時のトラブルの未然防止に役立ちます。
本記事では、転勤や異動などで持ち家を離れる場合に、賃貸に出すか売却するかを判断するポイントや賃貸に出すメリット・デメリットについて紹介しました。賃貸に出す場合は、家賃収入が得られるなどのメリットがある半面、いくつかのデメリットもあります。それらを総合的に判断して賃貸・売却といった方向を決定するのが賢明です。
とはいえ、中には「自分だけで判断するのはなかなか難しい……」という方もいるかもしれません。どういう手順で進めるのが良いのか、どういった点に注意すべきなのか、まずは賃貸業務を専門としている不動産会社に相談して、アドバイスを受けてみましょう。
※掲載の情報は、2023年8月時点の情報です。
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