暮らしのTIPS無理なく節電しながら
夏を涼しく過ごす
July 11, 2023

暑い夏、気になるのがエアコンの電気代。だからといって、暑さを我慢するのは健康によくありません。大事なことは暑さを防いで、エアコンが効きやすい家にしておくこと。今回は、無理なく節電しながら夏を涼しく過ごす住まいの工夫をご紹介します。

夏の電気使用はエアコンが圧倒的

本州、四国、九州における夏の点灯帯(19時ごろ)の電気の使用割合の例
(資源エネルギー庁:どうやったら節電できる?明日からすぐに役立つ節電・省エネのヒントより。グラフは再構成をしています)

2022年の初夏、政府は記録的な暑さを受けて、東京電力の管内に4日連続で「電力需給ひっ迫注意報」を発令しました。

今年の夏も猛暑が予想されています。そこで気になるのがエアコンの電気代。夏に家庭で使用する電気の40%近くがエアコンで占められています。

中でも電気を一番多く消費するのは18時ころから夜にかけての時間帯。帰宅してエアコンをつける、暗くなって電気をつけるなど、多くの家庭で電気を使い始めるタイミングだからです。

エアコンの電気代がかさむ原因は、大きく2つあります。
1つめは部屋が暑くなり過ぎて冷やすのにたくさんの電気が必要になっている、2つめは何らかの原因でエアコンに負荷が掛かって電気代がかさんでいる可能性です。

これらはちょっとした工夫で改善が可能。電気代の高騰が続き、カーボンニュートラルの観点からも節電が必要な時代です。

暑さを我慢して省エネにするのではなく、涼しく快適に暮らしながら電気代を削減、お財布にも地球にも優しい暮らしを目指しましょう。

日射熱を室内に入れない工夫

夏の暑さの主な原因は、太陽の光が運んでくる熱。この熱は「輻射熱」もしくは「放射熱」と呼ばれ、空気を伝わってくるのではなく、電磁波によって対象の物体を直接温めます。

直射日光に当たるとより暑さを感じるのはこの熱を感じているからです。建物や地面も夏の直射日光が当たった箇所は、輻射熱によって表面温度が60度を超えることもあります。

室内でも同じことが起こります。夏の強い日差しが室内へ差し込むと、フローリングや壁、窓、家具などの表面温度が急上昇。それらがまた新たな発熱源となり、輻射熱が発生します。

そうなれば、真夏に超高温の床暖房やパネルヒーターをつけているのと同じような状態に。床暖房やパネルヒーターは輻射暖房と呼ばれていて、まさに同じ原理なのです。

このような状態ではいくらエアコンを付けても追いつかず、エアコンの電気代もかさみます。

夏に涼しい家にするコツは、この熱を遮ること。窓に日よけをつけて室内に日差しを入れないようにするだけでも暑さは大きく軽減します。

効果が高いのは、室外側から窓全体を覆うように日よけをすること。窓そのものが熱せられてしまうと、それが新たな発熱源となるからです。

一戸建てなら屋外型のロールスクリーンタイプの日よけや、ゴーヤなどを育てる緑のカーテンもお勧めです。緑のカーテンは日陰を作りながら、葉の蒸散作用で室内を涼しくする効果があります。

遮熱、防カビ、ミラー効果を持つナチュラルなレースのカーテン。ミラー効果とは昼間に外からの視線を遮り見えにくくする機能です(SC8699 /サンゲツ

室外側に日よけを取り付けることができないマンションなどの集合住宅の場合は、窓の内側に遮熱カーテンを取り付けるといいでしょう。

外出時には厚手のドレープをしっかり閉めて徹底的に熱を遮り、昼間の在宅時はレースタイプの遮熱カーテンを閉めて明るさを確保しながら暑さを防ぎましょう。

輻射熱による温度上昇を防げばエアコンが効きやすくなり、自然に電気代の節約ができるようになります。

サーキュレーター併用が省エネ

エアコンに加えて、サーキュレーターも併用すると、省エネに部屋を涼しくすることができます。

電気製品を増やすと電気代が安くなるというのは不思議な気もしますが、エアコンだけで冷やすよりも、エアコン+サーキュレーターを組み合わせるほうが電気代は安く済むというデータがあります。

というのもサーキュレーターを使って空気を動かすと涼しさを感じるようになるので、エアコンの設定温度を上げても快適に過ごせるようになるから。

エアコンは設定温度を1度上げるだけでも大きな節電効果があります。それに比べてサーキュレーターの消費電力量は少ないので、エアコンの設定温度を少し上げて、サーキュレーターを併用するほうがトータルでは省エネになるのです。

サーキュレーターは、下方にたまりがちな冷気をかくはんして室内をまんべんなく冷やしつつ、身体に風が当たることで涼しさを感じさせてくれます。もちろん扇風機でも大丈夫。家電を上手に使いこなして、快適に暮らしながら節電をしましょう

見落としがちな室外機の汚れ

電気代がかさむ原因のひとつに、エアコンのフィルター汚れがあります。汚れくらいと侮ることなかれ。エアコンメーカーのダイキン工業によると、約3年分のホコリが溜まったフィルターを掃除すると、無駄な消費電力を48.9%削減できるとしています。

フィルターが汚れていると余分な負荷が掛かり、消費電力量が増えます。キレイな空気を送りつつ、省エネな暮らしをするためにも、フィルター掃除は2週間に1度を目安に行いましょう。

フィルターのもっと奥、エアコン内部の汚れも1シーズンに1回は掃除をしておくことをおすすめします。ただし最近のエアコンは高性能なため、自分で行うと故障の原因になることも。専門の業者に依頼をするのがおすすめです。

忘れがちなのが室外機の存在です。室外機が汚れ過ぎると効率が落ち、故障の原因になることも。室外機のクリーニングは危険も伴いますので専門の業者に依頼をしましょう。

涼感インテリアで爽やかに

夏服と冬服で衣替えをするように、インテリアも夏仕様に模様替えをすれば、涼やかな気持ちで過ごせます。ポイントはカラーコーディネートと素材選びです。

夏に気持ちのいい色は寒色系です。寒色系とはその名の通り寒さを感じる色、青色を中心とした色合いのこと。暖色系は赤色を中心とした色合いのことで、寒色と暖色では体感温度が2~3度変わると言われています。

クッションカバーなどを寒色系に着替えるだけでも、空間イメージは変わり、爽やかな印象になります。

肌触りも重要です。肌に触れるカバー類は汗を吸い取ってくれる綿やリネンなどの自然素材に交換を。汗をかいた肌の湿気が戻るとベタベタと気持ち悪く感じます。汗を吸い取りやすく、丸洗いができる素材なら暑い夏もさらさらと気持ちよく過ごせることでしょう。

この夏は、まずは室内の温度をむやみに上げない住まいの工夫をしつつ、家電やインテリアの力で、涼やかに省エネにお過ごしくださいね。

※掲載の情報は、2023年7月現在の情報です。

一級建築士事務所 OfficeYuu代表Yuu(尾間紫)Yuu(Yukari Oma)
一級建築士、 インテリアコーディネーターとして数多くの現場経験や相談実績をもち、住宅リフォームコンサルタントとして快適な住まいづくりのノウハウを発信している。