コロナ禍をきっかけに急速に普及したリモートワークや資材価格の高騰など、ここ数年でわたしたちの暮らしの状況は大きな変化を迎えています。ライフスタイルの多様化にともない、二拠点生活や地方移住といった暮らしのあり方もさらに注目を集めるようになってきました。野村不動産では、ストック型社会に対応し、今後大量にリフォーム適齢期を迎えるマンションストックを活用したリノベーション事業に取り組んでいます。多様化する住まいへのお客様のニーズに対応し、「安心」と「魅力」を備えた良質な商品を提供し、野村不動産の住まいブランド価値の新たな魅力付けを図っています。
同事業に携わる松本恭輝さんと高木仁美さんは、事業を通じて住まい手の方々の意識の変化を感じてきたそうです。多様なライフスタイルに寄り添い、使い心地のいいリノベーション空間を生み出すための視点をお二人にお聞きしました。
購入物件の検討を行う松本さんは、仲介となる不動産会社の方々とコミュニケーションを通して、売り手の方々のライフスタイルの変化を肌で感じてきました。中でも、子育てを終えたシニア層の方々が売りに出された物件からは、建設時から現在にいたるまでの間取りの変化を感じることが多いそうです。
「不動産仲介担当の方からお客様の生の声を聞くようにしているのですが、近年は2LDKより3LDKの方が喜ばれるそうなんです。LDを広くとった間取りが多かった以前とは変わり、部屋の数を重視される方が増えてきています」
時代とともに変化してきたライフスタイルは、住まい手の方々が希望する間取りや住まい方に大きな影響を与えています。部屋数を増やしたいという背景には、コロナ禍を経た働き方の変化がありました。
「コロナ禍をきっかけにリモートワークが普及したことで、家で過ごす時間が長くなったことが大きな影響としてあると思います。自宅で仕事をするといった、これまでにない自宅での過ごし方への変化により、音漏れの懸念などから部屋数を増やしたいという声を多くいただくようになりました。リビングを区切って書斎の空間がある間取りへ変更することも多いですね」
さらに、不動産や資材価格の上昇の影響から、以前よりも中古物件も視野に住まいを探す方も増えてきたといいます。同エリアの新築マンションと比べて、価格が抑えられることが魅力となっているようです。インターネットでの物件検索が一般化したこともあいまって、同価格帯の新築物件と中古物件をフラットな目線で比較する購入希望者の方も多くなってきました。しかしながら、中古マンションを購入することに不安を感じられている方も少なくありません。
「野村不動産のリノベーションマンションは、お引渡し後、リノベーションを実施した箇所に関して、野村不動産のアフターサービスが適用されます。購入後も、安心してお住いいただけることも、リノベーションマンションをお選びいただくひとつの要因となっていると思います」
新築・中古を問わず、フラットな物件検索が可能になった現在、住まい手の多様性を視野に入れることが必要だと高木さんは語ります。
「ネットで情報を探す方々が増えたことで、住まい手の方々のニーズも多様になってきたのを感じています。以前は不動産屋さんごとにお客様の層がある程度分かれていた印象ですが、Webサイト経由でお問い合わせいただくお客様は、働き方といったライフスタイルもさまざまです。リビングの使い方についても、オープンがいいという方もいれば、クローズドな空間を希望される方も当然いらっしゃるので、どちらに対してもご要望を満たせる空間を考える必要があります」
働き方の急速な多様化に対応するためには、住まい手の暮らしに寄り添う想像力が不可欠となります。リノベーション事業では、松本さんをはじめとする商品企画・プランニングを行う推進担当が連携し、不動産としての新たな価値を生む空間づくりに取り組みます。
その際に、いかに「使い心地」に気を配るかが重要だと高木さんは語ります。野村不動産の物件を通じて心地よさを感じていただくためにも、小物ひとつにいたるまで、ディテールに目を配ることを怠らないそうです。
「たとえば、右利きと左利きのどちらの方でも使えるように、包丁差しのような小物は向きを入れ替えられる仕様にしています。高齢者の住まい手を想定したリノベーションでは、コンセントの位置を少し高めに設置するなど、細かなところにこそ気を配るようにしているんです」
使い心地に加え、インテリアデザインによって生み出されるラグジュアリー感覚も一貫したこだわりだといいます。野村不動産が展開する『プラウド』のインテリアで使用されている、木材や石材、ガラス材といった自然素材のノウハウをリノベーション物件でも引き継ぐことで、ディテールにいたるまでラグジュアリーへのこだわりを感じさせる空間をデザインしています。
「たとえば、(取材場所となった)この物件では、クォーツの特性を活かしてつくられている『シーザーストーン』という素材を多用していますが、これはプラウドの物件で使用されている素材でもあります。大理石よりも硬く耐久性があり、天然石の素材の美しさが最近人気の素材で、新築の空間で培ったノウハウをリノベーション空間にも活かしています」
販売価格やエリアごとに、異なるターゲットに合わせたリノベーションプランを立案するなかで、とりわけ高木さんは「たったひとり」の心に響くこだわりを取り入れるようにしているそうです。ペルソナといった平均的な人物像ではなく、特定の個人に響くポイントを意識することで、「ここに住みたい」と思ってもらえるチャンスが生まれると高木さんは語ります。
「『ここが好き!』って思っていただけるポイントを一箇所はつくることを心がけています。この物件では、扉を開けた瞬間に住みたいと感じていただけるような、玄関の広さにこだわりました。仕切りを無くすことで空間をつくり、コレクションを自慢できるような鏡張りの収納を配置することで、趣味を楽しむ方を想定しています。思い描いた『たったひとり』の人の心に深く響くようなポイントをつくることは、ひそかなこだわりでもあります」
カフェなどの飲食店や商業施設では、異なる時代の痕跡が感じられる魅力的なリノベーション空間を数多く目にするようになってきました。マンション・住宅の分野でも徐々にリノベーション物件が普及してはいるものの、賃貸ではなく購入を検討する方にとっては、これから暮らしを支える場所として安心できるかどうかが大きな判断基準となってきます。
野村不動産が展開するリノベーション事業では、『プラウド』の物件を通して生まれた高級感へのイメージが、中古物件の購入に踏み切る住まい手の方々の安心感につながっていると松本さんは語ります。
「不動産仲介担当の方からは『野村不動産といえば高級感ですよね』とおっしゃっていただけることも多く、リノベーション物件においても同様の印象を抱いていただけている実感があります。わたしたちがリノベーションを手がけた物件は、扉を開ける瞬間が楽しみだという声もいただいており、とてもありがたいですね」
リノベーション事業が社会の中で広がっていることにやりがいを感じるという松本さんは、事業の最前線に立つことの醍醐味を語ります。最後に、今後の意気込みをうかがいました。
「私たちは、クロスの張替・設備の交換・修繕など、『住まいの改修』を目指すリフォームに対して、性能の向上や、好みのデザインに合わせた間取りの変更など、新しい付加価値を生み出すことこそがリノベーションであると捉えています。また、ライフスタイルや家族構成、趣味趣向に合わせた住まいづくりはもちろん、すべてを新しくするのではなく、まだ使えるものは使うという環境にも配慮した施工を考えることも、リノベーション事業ならではだと感じています。今後も、住まいを探されている方々の選択肢を増やし、多様なニーズに答えられるような住まいを提供し続けていきたいと考えています」
変化し続ける住まいの最前線に立つ、リノベーション事業の挑戦は続きます。