暮らしのTIPS国交省が2024年の「基準地価」を公表 東京圏の住宅地3.6%上昇December 24, 2024

不動産価格の上昇が何かと話題になっています。そのような中、2024年9月17日に国土交通省から都道府県地価調査の結果が公表されました。調査対象の基準地の地価は、住宅地や商業地といった全用途における全国平均では前年比プラス1.4%。3年連続でプラスとなり、上昇幅が拡大しました。

皆さんの中には、「地価は気になるけれど、発表される地価は、名称が異なったり、発表時期が様々だったり、わかりにくい」と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回の地価調査の結果も見ながら、「一物四価」とも言われる不動産の価格についてみていきしょう。

都道府県地価調査・・・「基準地価」

当調査は、各都道府県知事が国土利用計画法施行令にもとづき、毎年7月1日時点における基準地1㎡あたりの標準価格を調査し、毎年9月に公表するものです。都道府県の発表に合わせて、国土交通省が全国の状況をとりまとめて公表します。今回の基準地数は、21,436地点です。

この地価調査は、適正な地価の形成を図ることを目的に行われるもので、近隣地域の標準的な画地の価格水準や同じ地点の地価動向がわかるため、不動産を売買するときの重要な地価情報となるのです。
様々に発表される地価をチェックする際、次の点に注目するとその違いがわかりやすくなります。

  • 1.誰が(公表者) 2.いつ(評価時点・公表時期) 3.何のために(利用目的)

例えば、今回の地価調査にあてはめると、1.各都道府県が、2.毎年7月1日時点の基準地の価格を9月に公表、3.適正な地価形成を図る(土地取引の参考指標の)ために公表される、というわけです。

四つある?不動産価格:「一物四価」とは

土地の価格は、地域が異なる場合はもとより、同一の近隣地域のものであっても、地積、形状、接面道路の状況など、個々の要因によって、個別の価格が形成されます。それゆえ、不動産は唯一無二です。一つの土地に特定の価値と価格が存在します。ところがこの「一物四価」とは、1つの土地に対して、4つの価格が存在することを意味するのです。

4つの価格とは、「実勢価格」、「公示地価」、「相続税評価額(路線価)」、「固定資産税評価額」の4つです。今回発表になった「基準地価」を加えると、「一物五価」。一つの土地に5つの価格が存在することとなります。「実勢価格」以外の価格は、土地の資産価値を判断するための地価指標とされている重要な価格です。それぞれ根拠となる法令や通達、公表者、公表時期、利用目的、価格水準等が異なっており、前述の①誰が、②いつ、③何のために、のチェックポイントが有効です。各々のポイントをみていきます。

実勢価格 公示地価 基準地価 相続税
評価額
(路線価)
固定
資産税
評価額
誰が
(公表者)
売り手と買い手の間で合意し、実際に契約が成立した取引価格 国土交通省 都道府県 国税庁 市町村
いつ 評価
時点
1月1日 7月1日 1月1日 3年毎の1月1日
公表
時期
3月 9月 7月 3月~4月
何のために
(利用目的)
適正な地価の形成。一般の土地取引の指標。
※公示地価と基準地価は、相互に補完しあう関係
相続税や贈与税における土地の評価
※公示地価の80%
固定資産税、都市計画税、不動産取得税等の課税の基
※公示地価の70%

◎「実勢価格」
不動産の売買が成立すると値段が付きます。その取引価格が「実勢価格」です。私たちが日頃、「価格」というと実勢価格を指すことが多いのですが、例えば自宅を売却しようと思った時は、売出し価格だったり、売却希望価格だったり、するかもしれません。そして、相手の言う「価格」は、購入希望価格や購入予算で、両者にギャップが生じるケースはよくある話です。両者の提示価格を基に、交渉を重ねながら商談が成立した約定価格が実勢価格です。需給の関係で、基準地価より高い場合もあれば、低くなる場合もあります。

実際の取引価格の情報は、国土交通省「不動産情報ライブラリ」の「取引価格情報」から閲覧することが可能です。
「不動産情報ライブラリ」とは、不動産の取引価格、公示価格、基準地価等の価格情報や防災情報、都市計画情報、周辺施設情報等、不動産に関する情報を入手できる国土交通省のWEBサイトです。

https://www.reinfolib.mlit.go.jp/

◎「公示地価」
地価公示法に基づき、国土交通省土地鑑定委員会が、一般の土地の取引価格の指標とするなどのため、都市計画区域等における標準地を選定して、毎年1月1日時点(※)の1㎡当たりの正常な価格を判定し公示します。地価公示の価格は、全国26,000地点について不動産鑑定士が選定及び確認を行い、分科会等における議論を経て鑑定評価した価格に基づいて判定されています。

都道府県が公表する基準地価(毎年7月1日時点の調査)と調査時期、調査地点において相互に補完的な関係にあることもポイントです。調査地点が一部共通となっており、半年毎の地価動向を示されます。

※ 2024年年1月1日午前0時以降に発生した能登半島における地震による影響は反映されておりません。

◎「相続税評価額(路線価)」
国税庁が毎年7月に公表するもので、相続税や贈与税の課税基準を算出することを目的とした価格です。路線価は、道路に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価格で、「路線価×土地の面積」を基本に土地の評価額が調整されます。路線価が定められていない地域は、その市区町村の「評価倍率表」をもとに評価されます。なお、路線価は、公示地価の80%を目安に決定されています。

路線価は、国税庁が提供するインターネットの「財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)」で閲覧可能です。

https://www.rosenka.nta.go.jp/index.htm

◎「固定資産税評価額」
固定資産税評価額は、市町村が発表する土地の価格です。固定資産税や都市計画税、不動産取得税、登記の際の登録免許税など、不動産に関連した税金を課税する際の基準となる評価額です。固定資産税評価額は、毎年公表されるのではなく、3年に1度評価替えが行われるのが特徴です。2024年は評価替えの年に該当します。固定資産税評価額は課税証明書に記載されていて、毎年1月1日時点での不動産所有者(納税義務者)へ各市町村から届く固定資産税の納税通知書に添付されています。固定資産税評価額は、公示地価の70%を目途に評価されます。

2024年の「基準地価」の動向。全用途の全国平均1.4%上昇

2024年の都道府県地価調査の結果をみておきましょう。地域や用途により差があるものの、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも3年連続で上昇しています。三大都市圏では上昇幅が拡大し、地方圏でも上昇幅が拡大又は上昇傾向が継続するなど、全体的に上昇基調が強まっています(下表参照)。

全用途の全国平均の上昇率1.4%は、1991年の3.1%以来の伸び幅です。用途別では住宅地の全国平均が前年比で0.9%伸びました。三大都市圏では3.0%、なかでも東京圏が3.6%と上昇率の拡大を牽引しています。三大都市圏では、再開発や低金利下での堅調な住宅需要が地価を押し上げた格好です。地方圏では、2年連続でプラスとなったものの、上昇率は0.1%と横ばい。地方四市(札幌市・仙台市・広島市・福岡市)は、5.6%の上昇。12年連続で上昇したが、上昇幅は縮小しました。移住者用住居などの需要が増大し、高い上昇となった地点も見られます。

上昇率が高いのは商業地です。全国平均が2.4%、三大都市圏が6.2%、地方圏が0.9%と上昇。主要都市や外国人を含めた観光客が回復した観光地では、店舗・ホテルなどの需要が堅調です。オフィスについても空室率の低下傾向や賃料の上昇傾向によって収益性が向上していることなどから、地価上昇が継続中。

ちなみに、商業地上昇率ベスト5のうち、4地点は熊本県です。熊本県では大手半導体メーカーの工場が進出し、関連企業も含めた従業員向けの住宅需要のほか、関連企業の工場用地や店舗等の需要も旺盛。商業地に加え、住宅地、工業地ともに高い上昇となっています。地価の公表に伴い話題となるのが最高価格です。商業地の全国トップは、中央区銀座2丁目の明治屋銀座ビル、1㎡あたり4,210万円。19年連続の全国最高価格地点となりました。

【2024年 地価調査 全国の地価動向】

地価を身近に

一物五価は、不動産価格の基本となるものです。他にも、国土交通省が不動産価格指数を発表していたり、民間の調査機関が住宅の実勢価格を公表したりしています。住宅を保有中は、毎年、固定資産税等が課税されますし、売却時も相続の時も、土地の評価額が影響します。今回ご紹介したように、国土交通省や国税局などのサイトで、自宅や近隣の地価を閲覧できます。先ずは身近な地価から調べてみてはいかがでしょう。持家の方は、自治体から郵送される固定資産税の納税通知書をみてみましょう。課税の仕組みなどもわかり、興味深い情報が満載です。
地価に関するニュースにも注目してみましょう。

※掲載の内容は2024年12月時点の情報です

大石 泉Izumi Ohishi
ファイナンシャルプランナー CFPⓇ。1級FP技能士。宅地建物取引士。産業カウンセラー。大学卒業後、株式会社リクルートへ入社。住宅雑誌の編集・制作に約15年勤務の後、’01年にFP事務所を設立。老若男女を対象に新聞による経済教育、ライフプラン、資産形成などの講座や研修を大学や企業へ展開。個人向けにはファイナンシャル・プランニング、ライフ&キャリアプランニングを提供。金融リテラシーの普及活動が評価され、金融庁と日本銀行から2014年度金融知識普及功績者として表彰される。