総務省統計局が公表している「平成30年 住宅・土地統計調査」によると、2018年時点で日本の空き家数は848万戸、空き家率が13.6%とどちらも過去最高でした。日本の空き家は増加傾向にありますが、その理由の一つに「相続」が挙げられます。親の家を相続したものの、相続人は別で住まいを持っているため、空き家のままにしているケースは少なくありません。
今回は、実家を相続する際の売却する方法や節税対策などを紹介します。
ここでは、空き家になっている実家の売却の手順を解説します。
1.相続登記をする(名義変更の確認をする)
空き家を相続した場合、名義を被相続人(亡くなった人)から相続人(相続する人)へ変更するために、相続登記を行う必要があります。なぜなら、空き家は名義人しか売却できないからです。
相続登記は、売却予定の空き家を管轄する法務局で手続きできます。空き家が共同名義になっている場合は、全員が売却に賛成しなければ売却できないため、注意が必要です。
2.売却する不動産会社を決める
信頼性の高い不動産会社を選ぶには、複数社への査定依頼が大切です。査定依頼を1社に絞ってしまうと提示された査定価格が相場かどうかの判断ができません。
また不動産会社は、物件の種類やエリアによって得意・不得意があるため、選定の際は注意しましょう。
3.媒介契約を締結して売りに出す
売却価格や条件などに納得できたら媒介契約を締結して売りに出すのが一般的です。媒介契約書には、契約期間や売却価格、成約した場合の仲介手数料などの詳細が明記されています。媒介契約は、以下の3種類です。
それぞれ契約するうえでの条件が異なり、メリット・デメリットもありますので、ご自身にあった契約形態をお選びください。
※参考「nomu.com」
4.売買契約の締結
空き家になっている実家の買主が見つかったあとは、売買契約を締結します。売買契約書には、空き家の詳細や取引価格、引き渡し時期などが記載されているため、契約内容をしっかりと確認したうえでトラブルのないように注意することが大切です。
5.空き家の引き渡し・登記
売買契約の完了後、空き家の引き渡しと名義変更をする登記手続きを管轄の法務局で行います。
基本的に不動産売買の立ち会いの際には、司法書士が同席し売買代金の決済や登記手続きを依頼する委任状の記載などを行います。
6.確定申告を行う
空き家を売却して売却益が発生した場合は、確定申告を行います。また売却益が発生しなかった場合でも繰越控除などの特例を利用する場合は確定申告が必要です。
売却益が発生しているにもかかわらず確定申告をしないと、延滞税や無申告加算税などのペナルティを課せられるため、注意しましょう。
空き家に限らず不動産を売却する際は、さまざまな税金がかかります。ここでは、売却にかかる税金について解説します。
売却にかかる税金一覧表は、以下の通りです。
税金 | 概要 |
---|---|
登録免許税 |
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印紙税 |
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譲渡所得税 |
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相続税 |
|
空き家を売却して譲渡所得が発生した場合は、譲渡所得税が発生します。売却益は、売却価格から購入価格や譲渡費用などを差し引いた額です。譲渡所得は、以下の計算方法で税額が決まります。
出典:国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」
実家を相続した際は、相続税が課されることがあります。相続税は、課税遺産総額に税率を乗じて求めることが可能です。課税遺産総額の算出式は、以下の通りです。
・遺産総額-(3,000万円+600万円×法定相続人の人数)
例えば、遺産総額4,000万円、相続人3人の場合、課税遺産総額は以下のようになります。
・4,000万円-(3,000万円+600万円×3人)=-800万円<0
この場合、課税遺産総額が0以下となるため、相続税はかかりません。なお相続税は、相続の開始を知った日(通常は親が亡くなった日)の翌日から10ヵ月以内に申告・納付をする義務があります。
相続した実家を売却して売却益が発生すると譲渡所得税がかかります。ここでは、税金を抑える主な方法を3つ紹介します。
被相続人が居住用で使用していた空き家を売却する場合、空き家にかかる譲渡所得の特別控除を利用できます。この特例を利用すると最大で相続人一人あたり3,000万円の控除ができるため、譲渡所得税の負担の軽減が可能です。
詳細は、国税庁の「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」をご確認ください。
小規模宅地等の特例とは、被相続人の自宅や賃貸アパート、貸駐車場、事業所などの土地を相続したときに相続税評価額が最大8割減額される特例です。小規模宅地等の特例を利用すれば、土地にかかる相続税の負担を大幅に軽減できます。
詳細は、国税庁の「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」をご確認ください。
取得費の特例とは、相続により取得した空き家を売却する場合、相続時に支払った相続税額を取得費に加えて譲渡所得を計算できる特例です。取得費に相続税額を加算できるため、譲渡所得税を軽減できます。
詳細は、国税庁の「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」をご確認ください。
空き家を維持管理するためには、費用がかかります。国土交通省の「令和元年空き家所有者実態調査」よると年間の維持管理費で最も多いのは5万~10万円未満(18.0%)、次いで3万~5万円未満(14.6%)、10万~20万円未満(14.2%)です。
維持するだけで費用が発生するため、将来住む予定がないのであれば早いうちに売却を検討したほうがいいでしょう。
空き家は、さまざまな税金が発生するなど維持管理に支払う費用負担が大きくなってしまいます。一方で、空き家を売却した場合には売却益に税金がかかります。そのため、税金を抑える各特例をよく検討した上で売却を考えましょう。
各特例は、適用条件や内容が複雑で分かりにくいため、売却を依頼する不動産会社や専門的な知識を持った税理士など専門家への相談がおすすめです。
※掲載の情報は、2023年7月時点の情報です。